お知らせ

校長挨拶 
 

 北海道札幌白陵高等学校の公式ウェブサイトにアクセスしていただき、ありがとうございます。

 3月に本校を巣立っていった卒業生79名は、進学・就職と進路先を決定し、それぞれの道を力強く歩み始めています。令和7年度の本校は、56名の新入生を迎え、全校生徒157名、教職員29名でスタートします。

 今年度の本校のアップデート項目をご紹介します。

〇令和6年度入学生から学年制へ転換し、探究的な学びのリニューアルを行い、「Voyage Clair」(ボヤージュ・クレール」と名付けた『総合的な探究の時間』のプログラムを実施します。

〇今年度設置する学校運営協議会の委員の方のお力を拝借し、探究的な学びの実践面を支援していただきます。

〇生徒の学習や生活、進路など各種の相談や、家庭との連絡をより密接に行うために、1つの学年2クラスを4つのグループに分割し、それぞれのグループを1人の教諭が担当する「担当制」としました。

 3年次は本校最後の単位制となり、最後の一年をこれまでと同様の多彩な選択群で学び、巣立ちの時を迎えます。

〇図書局の生徒が、専門家から助言をいただきながら、学校図書館のリニューアルに取り組んでいます。目標は図書館をサードプレイス(気軽に立ち寄れる・誰かと自然に会話ができる・利害や役割から自由でいられる・安心して自分を出せる場所)にすることだそうです。

 

 宮沢賢治の童話『風の又三郎』の終盤、こんな場面があります。
 又三郎という不思議な転校生(高田三郎)が、数日で突然姿を消したあと、残された子どもたちが「彼は本当にいたのか、風だったのか」と思いながら、日常へと戻っていく場面です。ラストはこのように描かれます。

すると風が、ざあっと吹いて来ました。
そして、からんころん、からんころん、
風の中を、だれか馬に乗って行くような音がしました。

 この部分には、又三郎が「去ってもどこかで見守っている存在」として残ること、子どもたちの心に、何かしらの変化や芽生えがあったこと、風が象徴する「目に見えないけれど確かに感じるもの」といった宮沢賢治らしいテーマが凝縮されています。

 その少し前の場面で、子どもたちが又三郎の不在を感じながら、それでも学校に向かって歩き出す描写も印象的です。

そして、またみんなは、しずかに下って行きました。風が、ざあっと吹いて来ました。雲がびゅうびゅう流れて行きました。

 この一節は、子どもたちが坂を下っていくと風が吹く状況描写ですが、寂しさや不安を抱えつつも、前を向いて歩き出す子どもたちの姿が想起されます。それは、「新しい一日を自分のものにする」主体性の象徴に思えます。

 目には見えなくても、たしかにそこにいた誰か。姿が消えても、心に残る何か。子どもたちはその気配を感じながら、日常の中へと歩き出していきます。

 生徒たち一人ひとりが日々の風の中に自分だけの「何か」を見いだし、様々な経験を省察し、それを糧に未来に向けて力強く歩いて行くまでの3年間の良い環境を創造したいと思います。

 生徒の心の成長のために、教職員一同が今年度も全力でサポートしてまいります。

令和7年4月1日 北海道札幌白陵高等学校長 渋 谷   圭